即位礼正殿の儀と、文化の伝承~漆塗り~

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仏像彫刻工房「祥」
令和を象徴する華やかで伝統ある、即位礼正殿の儀。
諸外国から100を超す王族や首相が集い、国内外で大きな話題になりました。

即位を宣言された高御座と御帳台には、漆塗りや金箔などの伝統の技、神式の衣装にも古くから伝わる職人の技。
仏像彫刻にも伝わるこれらの技について、書いてみようと思います。

漆塗り

仏像彫刻 仏頭 漆塗り 金箔

仏像彫刻 台座 漆塗り 金箔

こちらは南都仏師・矢野公祥先生の作品、観音菩薩像と、薬師如来像台座。
3度の漆塗りを経て、金箔押し、彩色と丁寧に伝統の技が注がれています。

漆はもちろん、本うるし。
作業の様子を見学したい!と申し出たときの先生の言葉。

「顔も手もパンパンに腫れ上がり、数日は寝れないほどになる」

ゴーグルや手袋などでも防ぎきれず、空気を漂う成分だけでかなりかぶれるそうです。
ホームセンターで釣り道具用うるしを物色しただけでかゆくなるので、全くダメでしょう。

生徒の作品に勧められる合成うるし「カシュー」も、使う人の話だと少しかぶれるそうです。

漆を塗る回数は、横着して2回などにすると、金箔の乗りが悪く、却って手間なのだとか。

とても根気の要る作業ですね。

そして、とっても綺麗です!!

漆の木の現状

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西洋から入ってきたピアノを湿気に強くするために黒く塗った江戸時代の日本人。
黒いピアノは美しいと世界に広がり、英語で"japan"と言えば漆塗りを指すまでに。

昔はいくらでも自生していたうるしですが、乱獲により大きな木は全てなくなりました。
今は、若木が少し育ったら、幹ごと切って樹液を取り、そのまま使いきってしまいます。

資源を保全し、次世代につなぐ体制は、伝統芸術のあらゆる分野で不足が叫ばれています。

漆塗りの蒔絵に不可欠な筆の材料であるねずみの消滅と、筆職人も消えつつあること。
国産の大きな木材が減り、材木屋もどんどん減っている。
宅地開発で粘土が取れる土地がなくなり、廃業する陶器職人の話なども。


伝統職人が残る日本

即位礼正殿の儀では、中国系の人たちからも、よくこれだけの技術が残り、職人がいる!
との声が多く聞かれたとか。

衣装や漆工芸、建築技術のルーツを辿れば、もとは中国からの伝来文化。
中国では、政治の革命の毎に、要人も芸術家もことごとく殺されてしまう風習があり、高度な文化が途絶えてしまうとも聞きます。
一度途絶えてしまうと、記録や現物からの技術の復興は困難ですね。

天皇制という安全なベースの上で、神社の20年ごとの造替や、即位ごとの数々の儀式。
矢野先生も、春日大社のご造替で、多数の狛犬を奉納されました → (参考記事:産経ニュース 春日大社に納めた獅子・狛犬

日本の伝統世界の素晴らしい土壌を垣間見たような気がします。

本物のうるし、本物の金箔、伝統の技、日本の山の恵み、国の制度。
仏像彫刻には、たくさんの日本のエッセンスが詰まっているようです。

仏像彫刻工房「祥」
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